第2章

「おはよっ!」
カバンを持っていない右手にいきなりの衝撃。普通なら驚くところなのだが、もう慣れたものである。
「・・・なんですか、先輩。」
「テンション低いよぉ。」
「起きたばっかりなんだから仕方ないじゃないですか。あと、そろそろ離してください。」
校門で男の腕に女がしがみついていれば注目を集めて当然。慣れているとはいえ、さすがに恥ずかしい。
そう、この右腕に子供のようにしがみついているちっちゃい人こそ、ドーナツ屋で出会った正体不明の女性である。



「帰るのは許さないからね。思い出してから帰ってください。」
「・・・」
こりゃ本当に思い出さないと帰れそうにないな。高校は違う。中学も違う。小学校は中学とメンバー一緒。幼稚園はさすがに覚えてるわけがない。
「すみません、本当に分からないです。」
「ひどいなぁ。いつもスクールバスで一緒じゃん。」
スクールバス・・・。スクールというくらいだから、大学の通学に使っているバスだよな。
「あ、そうなんですか?すみません、思い出せなくて。」
・・・ん?ちょっと待て。悲しい話だが、俺に大学の友人は男が1人だけだぞ。女の知り合いなんているはずがない。
「あの、スクールバスが一緒とはいっても、何で俺のこと知ってるんですか?」
「ナツメ君さ、去年まで短大の方に従姉いたでしょ?私、さくらの中学からの友達だからいろいろと聞いてたってわけ。」
さくらとは俺の1つ年上の従姉である。もう卒業してしまっているが、俺の通っている大学の隣にあった短期大学にいた。
・・・おい。もう1回待て。
「先輩ですか!?」
「そうだよ。人を外見だけで決めちゃ駄目よ。」
この150センチあるかないかの女性を見て年上だと思う方が難しいっつーの。童顔なうえに化粧もほとんどしてないし。つーか、また思考よまれてるよ。
「すみません、あまりにもチビ・・・いや、小柄だったので。」
「確かに今でも中学生で通じるけどね。そんなわけで分かってくれた?」
「あー、なんで話しかけてきたんですか?」
「いやね、ナツメ君友達いないでしょ?だから私が友達になってあげようと思って。」
直球ですね。事実だからいいけど。
「あっ、そうそう。私は後藤伊織。よろしくね。」



急な回想でした。
そんなわけで、先輩と俺はなぜか『友達』になり、人生で忘れたくても忘れられそうにない、むしろ忘れさせてくださいと頼みたくなるような1日から約1ヶ月がたち、今この後輩に先輩がぶら下がっているという状況があるわけである。





はい、そんなわけで前回適当に書いた物語に続きを期待していますというコメントをいただいたので、暇な時間に考えてみました。う〜ん、いまいち。前回は本当に何も考えずに浮かんできた文章を書いただけだったのですが、今回は「物語を書く」と決めて書いたので、非常に難しかったです。つーか、俺大丈夫か!?